| 「緑の丘に近代的な建築物が建てられている」国
《昭和三十六年》 当今の海外旅行のほとんどは飛行機が利用されている。我々一行はバンコクからクアラルンプールに着いた。もちろん乗物は飛行機である。だから空から乗入れる旅行だけに、着陸間際になると機内の窓から飛行場の外景にまず目を止めるのが乗客としての常であるようだ。クアラルンプールの空港には、地元旅行社の代表者が迎えにやってきており、「TBS旅行団のミスター藤井」を連呼していた。そして指定のメルリンホテルヘ着くやいなや日本航空の出張員が私の傍にやって来て、日本航空を利用してくれないかという交渉をしにきた。そこへまた、三井物産の安田さんという人が、我ら一行に加わっていた武藤さんという人との取引関係のことで訪れて来た。 その安田さんという人は、当時のタカノ時計(今のリコーの前身)を東南アジア地方で身をもって売込むためにわざわざやって来でいる人であるということを聞かされたのである。そこでその晩は食後の時間を利用し、安田さんを囲んだパーティをすることにした。お陰でいろいろ現地の状況を聞くことができたので、その収穫にお互いが喜んだのである。翌日は、クアラルンプール一帯の視察旅行に出かけるコースをとり、この安田さんにガイドをしてもらうことにした。 地元の旅行社のガイドマンは、日本語が全然できなかったので大いに助かった。クアラルンプールという国の姿は、一口にいって「緑の丘に近代的な建築物が建てられている」という格好である。だから日本のような狭隘な地面関係や、交通量に比較した場合のものとは異なって、正に夢の国か、オトギの国にでも来たのではないかとしか思えるほどの美しさである。 このあとのコースの途中で香港に立ち寄った際に、ヘラルドコーポレーシヨンのブロックさんという外国人に会ったとき、問はれたので、クアラルンプールのことを緑の楽園と思いましたと感想を述べたところ、そうでしよう、クアラルンプールは世界の楽園として建設途上にあるのですといわれたことを合せ考へ、そのとおりだと思えた次第である。 この国はゴムが主要生産物で、その輸出で年間の国の予算額の約七割方が収穫されるという恵まれた環境にあるのだという。だから他国との比較にならないものかある。 この地方に五本の足を持った奇牛が一頭おり、お金を払った特別参観に供してくれた。 写真はマラヤのゴム林を訪れた一行、右から、山岡.北岡、中井.野村、秦、ガイドマン・安田(三井物産)、倉林、藤井、竹本の諸氏。 |
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