 | 不透明な今後の動きに合わせた展示会の役割
5月の開催が延期され、新型コロナ後初の大規模展示会として注目された「第24回神戸国際宝飾展」が、8月9日〜11日に神戸国際展示場で開催された。政府・自治体および展示会業界のガイドラインを基に来場者と出展社に対して安全対策が講じられた。 停滞している経済活動の活性化に寄与することに期待され開催された側面が大きかったが、度重なる感染者数の増加と自粛要請により、450社を見込んでいた出展社数は海外出展社80社と新規出展社 60社(見込み)を含む半数以上がキャンセルを余儀なくされ、実際の出展企業数は200社を切り、出展企業・申し込んでいた企業、そして主催社のリードエグジビションジャパンに大打撃と混乱を与えた。 それでも初日から出展企業の想像を超える来場者が集まり、最悪の事態は避けられたようだ。大型催事での新型コロナ対策の実際を見に来る人もいた。セミナーにおいては三密を避けるべく、間隔をあけていたため30名〜50 名程度の定員となっていた。また毎回好評の「ジュエリートークショー」に登場したデヴィ夫人の回は超満員となり、「満席」と表示したにも関わらず多くの人がデヴィ夫人を見たいと会場前に集まり、デヴィ夫人の爆発的な人気はコロナ禍においても健在だった。
経済活動の推進は止められない
浮き彫りとなったのは海外バイヤー不在の状態に加えて国内バイヤーが少なかったことで、B to Bの宝飾ビジネスが成立しなかったことだろう。途中で諦めざるを得ない出展企業も出た。出展社や関係者からは「一般消費者が多い」との声も聞 かれた。一般消費者に近いクリエイターや他業種の小売店が増えていることもあり、一般消費者に見える人は目立った。一方で、このような人たちを必要とする企業が出展している事実もある。この“一般消費者問題” に関しては、今回始まった話しではなく、随分と前からの課題。出展企業が招待したり名刺を渡して入場させていることも問題とされてきた。出展社の意見をまとめる出展社委員会なるものを立ち上げ、主催社と議論を重ねない限り、解決の道へはもう進めないはずだ。 B to Bであるべきだと主張するだけでは、仮に海外バイヤーが来場できるとなれば、“一般消費者問題”を解決することなく、多くの企業がまた出展するに違いないのだ。 また、キャンセルした企業の一部から、緊急事態における出展料金の一部返金を求める声も出ていたようだが、 主催社は規約に則り期限前にキャンセルを申し出た企業には全額 返金している。 その上に延期前に準備していた費用などがかさみ、コスト削減したと思われる運営面での失敗なども見られた。このような緊急事態の状況が続き、これからも同様に展示会への出展を控える企業が増えれば、規模が縮小し開催も危ぶまれる。不透明な中で経済の活性化を目的に開催されたことは評価されるべき部分もある。これを機に、B to Bなのか B to CなのかB to B to Cなのかをはっきりとさせるべきではないだろうか。同じ リード社が主催するメガネ展IOFTでは眼鏡協会も主催社となり、卸連合会が共催、販売店連合会が協催となり業界としてあるべき見本市の姿を一丸となって追い求めている。取り組みさえすれば変われないことはない。今だから取り組めることもあるに違いない。 その一方で、今回出展して良かったという企業もあった。現状を理解し、次に進むべきことが見えた、開催してくれ て感謝していると話していた。前向きに取り組んだ企業だ。ジュエリー需要の強さを感じた出展社も多かったことだろう。 また、Wechatによる在日中国人バイヤーに対応した企業は少なかったが、 対応した分だけブースが賑わっている企業もあった。接客に時間がかかる点はあるようだが、予想以上に売り上げに貢献した成果が今回は大きかったようだ。来場者は少なかったはずなのに、 3日間通し、ゆっくりと話す時間が持てないほど賑わうブースもあり、その姿は最終日の閉会時間まで続いていた。 オンライン商談も実施されたが、うまくいったという話は聞けなかった。ただ、主催社として本格的なオンラインサービスの導入は9月以降となっており、今回の導入は間に合っていなかったのが事実だ。今後どの業界、どの展示会や催事、どんな商売においてもオ ンラインサービスの導入は進むことなので、いち早く慣れて、可能な限り活用し売り上げを増やし産業を盛り上げていくことに繋げなければならない。次回のIJT秋(横浜、10月28日〜30日)にお いては本格導入される見込みであり、今回の例だけを鵜呑みにすることなく、 活用を検討すべきことであろう。経済活動の推進は止められない。変わりゆく展示会のスタイルをいち早く産業に取り入れるためにも、業界全体での方向性を示すことが期待される。 |
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