佐藤英昭の「特許の哲学」

2019/06/12
特許の哲学 其の36

特許異議申立により6割超が特許権縮減
 
 特許庁は,特許異議申立の最新の統計情報(申立日が平成27年4月〜平成29年9月末)を公表した。特許異議申立の件数は,平成27年4月に特許異議申立制度が開始されて以降,累計で3903件となり,そのうち3049件(約78.1%)が最終処分に至っている。
 現時点では異議申立によって取消決定が出される率は11.3%と低いようだが,特許権者が訂正をして維持決定がされた案件と,特許権者が申し立てにより請求項を削除した案件とを加えると,実質的な異議申立ての「成功率」は60%を超えていることがわかる。
 特許異議申立は,特許掲載公報発行日から6カ月と期間は限られているが,基本的に特許庁と特許権者の間で手続が進むため,手間やコストの面において無効審判よりも有利といえる。
 今後,競合他社の特許権の範囲を狭めたいと思われる場合には,異議申立制度の活用を検討されたい。(特許庁HP「特許異議申立の統計情報」より)。
2019/04/23
特許の哲学 其の35

IOCが「五輪」を日本で商標登録<ブランド保護と便乗対策>
 
 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え,国際オリンピック委員会(IOC)が,オリンピックを意味する漢字2文字の「五輪」について,特許庁に商標登録を出願し,認められた(登録日:2019年2月1日,登録番号:第6118624号)。東京五輪に関し,呼称やマークを使用できる公式スポンサーの権利を守り,便乗商法を防ぐことが目的とみられる。
 飲食物や装飾品等に「五輪」の文字を入れ,東京五輪大会を想起させる表現をすることは,いわゆる「便乗商法」として不正競争行為に該当する恐れがあり,IOCやJOCから使用の差し止め要請や損害賠償請求を受ける可能性がある。
 大会組織委員会は,不正便乗商法の恐れがある表現として「オリンピック開催記念セール,2020円キャンペーン」等を例示しているが,商業利用に当たるかどうかの判断は事案によって異なることから,今後,混乱が生じないよう周知や啓発を徹底していく方針。
2019/04/03
特許の哲学 其の34

著作権等の保護期間の延長
 
 TPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)が2018(平成30)年12月30日に発効したことにより,著作物等の保護期間の延長を含めた著作権法改正が同日から施行された。
 これを受け,文化庁は,著作物等の保護期間延長に関するQ&Aを公表した。
 著作物等の保護期間は,死亡,公表,創作した年の「翌年の1月1日」から起算する。改正前の著作権法においては,著作物等の保護期間は,原則として著作者の死後50年までとされていたが,このたびの法改正により,原則として著作者の死後70年までとなった。
 例えば,Aさんの著作物は,Aさんが1968(昭和43)年に亡くなったので,1969(昭和44)年1月1日から起算して,これまでは50年後の2018(平成30年)12月31日まで保護されるとされていたが,改正後は,70年後の2038年12月31日まで保護されることとなった。
2019/02/27
『特許の哲学』 其の33

特許料等の軽減措置<全ての中小企業に拡充>2019年4月1日施行
 
「不正競争防止法等の一部を改正する法律」の一部を施行するための関係政令が昨年末に閣議決定され,2019年4月に施行される。改正法により,これまでの一部の中小企業が対象だった特許料,審査請求料及び国際出願関連手数料の軽減措置が,すべての中小企業に拡充される。
現状では,所定の要件を満たしている中小企業のみが,必要な証明書を提出する等の手続を行うことで,特許出願した発明について特許庁で審査を受けるための審査請求料や特許料(1〜10年分)について1/3に減免される措置を受けることができる。
4月1日以降は,すべての中小企業が審査請求料,特許料(1〜10年分)が現状の半分程度に減免される措置を,証明書提出等の手続を行うことなしに,一律に受けることができる。
また,一律半減措置が施行される前に行われていた特許出願について,施行後に審査請求する場合であっても半減措置を受けられる。
2019/01/25
特許の哲学 其の32

1996(平成8)年〜1999(平成11)年の特許・技術動向
 
1996(平成8)年,商標法条約加入に伴う改正並びに不使用取消審判制度改善,連合商標制度廃止,異議申立制度の登録後への移行,標準文字制度採用,周知商標保護強化のための不登録事由追加,立体商標制度創設,団体商標制度明確化,商標登録料分割納付制度採用,現金納付制度導入,指定商品書換制度創設,商標権侵害罪に係る法人重課の適用等並びに民事訴訟法の改正に伴う改正が行われた。
・松下電器とパイオニアがDVDプレイヤーを発売
・電子機械工業の生産額は24兆4300億円で自動車を抜く
・NTTの分割発表,長距離部門の国際通信への進出が始まる
 1998(平成10)年損害賠償制度・意匠制度見直し,ペーパーレスシステムの意匠・商標への拡大,国と国以外の者との特許権等の共有に係る特許料等の減免等並びに種苗法の改正に伴う改正が行われた。
・1999(平成11)年 NTTドコモがインターネットに接続する携帯電話iモードを発表。
2019/01/25
特許の哲学 其の31

1970
(昭和45)年から10年間の特許・技術動向
〈後半〉
1978年(昭和53)年、特許協力条約への加盟に伴う新法の制定及び同条約に基づく国際出願の開始、並びに農産種種苗法の一部改正に伴う改正が行われた。
1978年 東芝が日本語ワードプロセッサーを発売
1979年 日本電気がパソコンPC8001を発売、64kDℛAⅯ出荷が1始まり80年代の世界市場を圧巻   
1980年 富士通ファナックでロボットによるロボット生産、自動車の生産台数は1104万台で世界首位
1981年 東海村では動燃再処理工場が操業開始
1982年 民事訴訟法等の一部改正に伴う改正、ソニーがCDプレイヤーの販売開始、本田技研がオハイオ工場での操業開始 
1983年 国家行政組織法の一部改正に伴う改正、初の通信衛星さくら2号aを宇宙開発事業団NUロケットにやり打ち上げ、工作機械の生産額が世界首位
1984年 特別会計法の制定に伴う改定、ガットが日本の工業製品輸出額が世界首位と発表
2019/01/16
特許の哲学 其の30

1985(昭和60)年〜10年間の特許・技術動向<後半>
 
1991(平成3)年,サービスマーク登録制度導入に伴う改正,半導体4社が16M DRAMの量産を開始,NHKがハイビジョンテレビ放送を開始
 1993年,補正範囲の適正化・審判制度の簡素化・早期保護実現のための改定に伴う改正,不正競争防止法改正・行政手続法制定に伴う改正,日立と富士通は16M DRAM増産のため韓国半導体企業と提携
1994年,世界貿易機関を設立するマラケシュ協定加入に伴う改正,外国語書面出願制度創設,特許付与後異議申立・特許権の回復・実用新案無審査登録の各制度導入,宇宙開発事業団がH−2ロケット打ち上げ,海外の日系企業のVTR生産額が国内企業を上回る
1995年,刑法の一部改正に伴う改正,特許第200万号誕生,半導体製造装置の販売額が1兆円を超える,移動通信網への設備投資額が鉄鋼業を超える,世界の産業ロボット稼働台数64万台のうち,アメリカ6万台に対し日本では38万台が稼働
2018/11/02
特許の哲学 第29

1970(昭和45)年〜10年間の特許・技術動向<後半>
 
 1978(昭和53)年,特許協力条約への加盟に伴う新法の制定及び同条約に基づく国際出願の開始,並びに農産種苗法の一部改正に伴う改正が行われた。
 1978年 東芝が日本語ワードプロセッサを発売
 1979年 日本電気がパソコンPC8001を発売,64K DRAM出荷が始まり80年代の世界市場を圧巻
 1980年 富士通ファナックでロボットによるロボット生産,自動車の生産台数は1104万台で世界首位
 1981年 東海村では動燃再処理工場が操業開始
 1982年 民事訴訟法等の一部改正に伴う改正,ソニーがCDプレイヤーの販売開始,本田技研がオハイオ工場での操業開始
 1983年 国家行政組織法の一部改正に伴う改正,初の通信衛星さくら2号aを宇宙開発事業団NUロケットにより打上げ,工作機械の生産額が世界首位
 1984年 特別会計法の制定に伴う改定,ガットが日本の工業製品輸出額が世界首位と発表 
2018/10/11
特許の哲学 第28回

1970(昭和45)年〜10年間の特許・技術動向<前半>
 
1970年 出願審査請求・出願公開・審査前置制度等の採用に伴う改正、
      東大宇宙航空研究所がラムダ4S5ロケットにより23.8sの人工衛星を打上げ、シャープがLSI電卓を発表。
1971年 民事訴訟費用等に関する法律の制定に伴う改正と許可・認可等の整理に伴う改正。
1972年 本田技研が75年排ガス規制を達成するエンジンを開発。
1973年 国民の祝日に関する法律の一部改正に伴う改正
1974年 カシオが液晶デジタル時計を発売。
1975年 物質特許制度及び多項制の採用、登録商標の使用義務の強化等に伴う改正、世界知的所有権機関へ加盟、日本の乗用車の対米輸出は90万台となりフォルクスワーゲンを抜く。
1976年 超LSI組合が発足,ビクターがホームビデオ発売。
1977年 初の気象衛星ひまわりがNASAのデルタ・ロケットにより打上げ、新日鐡大分製鉄所では世界最大の高炉に火が入る。
2018/10/11
特許の哲学 第27回

1959年(昭和34年)、現在の特許法の基礎となる昭和34年法が成立
 
1952年、対日平和条約の発効に伴い,外国人の権利能力について条約に規定する場合の外、日本国民に対し,その国民と同一の条件によって権利能力を認める国の国民に対しては、相互主義によって権利能力を認める旨の規定を追加した。
当時の出来事としては、1953年NHKがテレビ放送を開始、川鉄千葉製鉄所の操業開始、1955年トヨタ自動車が乗用車クラウンを発売、東京通信工業(現ソニー)がトランジスタラジオを発表、1956年呉のNBC造船所で世界最大のタンカーが進水、商船の進水は174万トンとなり世界首位へ、東海道線が全線にわたって電化、1957年光学機械の対米輸出額がドイツを抜いて首位へ、1958年富士重工製作のジェット練習機T1が初飛行に成功、本田技研が50ccのオートバイクを発表した。
1950年に特許制度改正審議会を設立し、その審議の結果、1959年(昭和34年)、現在の特許法の基礎となる昭和34年法が法律として成立した。
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