佐藤英昭の「特許の哲学」
2021/07/30
「特許の哲学」 其の62
日本、自動運転の特許出願件数で 世界一位
特許庁は、今後の市場確定が見込まれる「機械翻訳」「スマート農業」「自動運転」等の技術テーマについて、特許出願状況の調査結果をまとめた。
この調査は、企業・大学・研究機関などが開発戦略や知的戦略を策定するために世界中の特許情報を分析したものであり、これによると「自動運転」関連技術の出願件数(2014〜2018年)の合計は53,394件となり、国別では日本の20,008件が最も多く1位となった。その他の各国主要国の順位は以下の通り。
1位:日本(20,008件)
2位:アメリカ(11,311件)
3位:ドイツ(7,824件)
4位:韓国(5,359件)
5位:中国(4,965件)
6位:欧州 ※ドイツ除く(3,062件)
この調査にて、「自動運転」の関連技術に関しては広範囲にわたり日本から多くの特許出願がなされていることが確認された。
今後、自動運転の開発が活発化していくことで、あらゆる交通手段の統合・ 最適化が可能となり、より快適なサービスの提供が期待される。
(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2021/07/03
『特許の哲学』 其の61
特許法の改正案が成立
令和3年5月14日、特許法等の一部を改正する法律案が国会で成立した。
新型コロナウイルスの感染拡大により、「非接触」の生活様式が浸透してきており、電子商取引の急伸に伴う模倣品の流入や、情報通信分野等における特許ライセンスの大規模化及び複雑化等、消費行動や企業活動も変化してきた。
これらの生活様式及び経済活動の変化に対応した策を講じるとともに、知的財産制度を安定的に支える基盤を構築することが必要なことから、デジタル化、リモート・非接触など、以下の内容を柱とした改正となっている。
(1)
デジタル化等の手続の整備
ウェブ会議システムの利用、窓口でのクレジットカード支払等を導入等
(2) デジタル化等の進展に伴う企業行動の変化に対応した権利保護の見直し、増大する個人使用目的の模倣品輸入に対応し、海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為を商標権等の侵害として位置付ける等
(3)知的財産制度の基盤強化
特許権侵害訴訟において、裁判所が広く第三者から意見を募集できる制度を導入等
(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2021/07/03
■ 『特許の哲学』 其の60
■ 『特許の哲学』 其の60
国際特許出願件数、中国が2年連続世界1位
世界知的所有権機関(WIPO)は、特許協力条約(PCT)に基づく2020年の国際特許出願件数を発表した。
それによると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの中にありながらも、2020年はPCT国際特許出願件数が過去最高に達したと明らかにした。
世界のGDPが3.5%減少する中、国際特許出願は4%増加し、過去最高の275,900件となった。
国別では、中国の出願件数が68,720件となり、昨年に続き米国(59,230件)を抜いて世界1位となった。
技術分野別では、コンピュータ技術が24,332件で全体の9.2%を占め最多となった。このほか、デジタルコミュニケーション(22,068件)、医療技術(17,493件)、電気機械(17,363件)が上位になった。(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
国際特許出願件数、中国が2年連続世界1位
世界知的所有権機関(WIPO)は、特許協力条約(PCT)に基づく2020年の国際特許出願件数を発表した。
それによると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの中にありながらも、2020年はPCT国際特許出願件数が過去最高に達したと明らかにした。
世界のGDPが3.5%減少する中、国際特許出願は4%増加し、過去最高の275,900件となった。
国別では、中国の出願件数が68,720件となり、昨年に続き米国(59,230件)を抜いて世界1位となった。
技術分野別では、コンピュータ技術が24,332件で全体の9.2%を占め最多となった。このほか、デジタルコミュニケーション(22,068件)、医療技術(17,493件)、電気機械(17,363件)が上位になった。(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2021/04/30
■ 特許の哲学 其の59
特許庁関係手続における 押印の見直しについて
日本の規制改革の一環として行われている「書類への認印の押印廃止」に伴い、2020年末に特許関係の法令も改正されることとなった。
日本では、個人及び法人がそれぞれ行政庁に印鑑を登録する制度があり、 その登録した印鑑を「実印」といい(登録証明書が発行される)、それ以外の印鑑を「認印」というが、これまでの特許行政においては基本的には「認印」 の押印で事足りていた。
ところが、今般の「書類への認印の押印廃止」に伴い、特許庁では手続による結果の重大性により「実印の押印+印 鑑登録証明書」を要する手続きと、「印鑑の押印不要」の手続きとに分けられた。それにより、多くの手続きにおいては「認印の押印廃止」されたが、これまで不要であった「実印の押印+印鑑登録証明書」を要する手続きが新たに規定された(権利移転等)。
現在のところ、印鑑証明書の提出は 最初の1回のみで良い。なお、日本国において印鑑登録できない外国人と外国法人については、従前同様に署名による手続きが可能である。 (特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2021/03/30
特許の哲学 其の58
無形資産を一括担保に融資実施
金融庁では、中小企業が持つ知的財産権・独自技術・ノウハウ等の無形資産を含む「事業全体の付加価値」を一括担保にできる新たな融資の仕組みを構 築する。
これまでも特許権などの無形資産に個別に担保権を設定することはできたが、価値判断が難しい等の問題で浸透しておらず、現状では「不動産」等に偏っ た融資がされている。将来性がある企業であっても担保として差し入れる不動産がないと、コロナ禍で一時的に業績が悪化した場合事業の継続が困難になる恐れがある。
この新たな融資の仕組みにより、コロナ禍の影響を受けた中小企業に対して資金供給の手段を広げる狙いもある。
金融機関にとっても「事業全体の付加価値」を担保にできれば、融資先を再生させることが可能となり、自らの利益となるだけでなく、不動産を保有していなくとも強力な特許権・ノウハウ等を保有する中小企業の事業発展につながることが期待される。
(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2021/03/01
特許の哲学 其の57
口頭審理のオンライン化
特許庁では、新型コロナウイルス感染症拡大やテレワーク普及の影響を受け、 口頭審理をオンライン化する方針だ。
現行法では、次のように定められている(特許法第145条第1項、第203条)。
@
無効審判等の審理は原則「口頭審理」により行われる
A
A期日に審判長が定めた場所へ出頭する必要があ
る
B
B正当な理由がないのに出頭しないときは、10万円以下の過料に処される。しかしながら、口頭審理の開催によって都道府県を越えての人の移動及び人と人との接触が生じ、感染症拡大につながる懸念がある。この懸念から、緊急事態宣言下では口頭審理の開催が見送られ、宣言解除後も必要な事件に限り感染拡大予防策を講じた上で開催している。
口頭審理は、書面では十分に言い尽くせない当事者の主張を、審判長の審尋によって引き出すことにより、争点及び技術内容を正確に把握することにも役立つ。
この口頭審理をオンライン化することで出頭の必要がなくなり、感染症拡大への対策になるだけでなく、当事者への負担が大幅に軽減されることが期待される。
(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2021/02/03
特許の哲学 其の56
イギリスのEU離脱に伴う知的財産権への影響
2020年12月31日にイギリスのEU離脱後の移行期間が終了し、イギリスはEUの知的財産制度から離脱した(離脱協定第126条)。イギリスのEU離脱による特許・商標・意匠への影響は以下の通り。
《特許》 欧州特許庁(EPO)はEUの機関ではないため、イギリスのEU離脱は現在の欧州特許制度には影響を与えない。
《商標》 2021年1月1日時点で登録済のEU商標:
イギリスにおいては有効ではなくなるが、同等のイギリス商標が付与される。
2021年1月1日時点で出願済のEU商標(未登録):
出願人は、2021年1月1日の後9か月以内に同等のイギリス商標登録出願ができ、係属中の先の出願日を維持する。
《意匠》 2021年1月1日時点で登録済のEU意匠:
イギリスにおいては有効ではなくなるが、同等のイギリスの権利として保護される。
2021年1月1日時点で出願済のEU意匠(未登録):
出願人は、2021年1月1日の後9か月以内に同等のイギリス意匠登録出願ができ、係属中の先の出願日を維持する。(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2021/02/03
『特許の哲学』 其の55
模倣品の輸入規制対象厳格化
近年、インターネットの世界的な普及と電子商取引の発展に伴い、国内への模倣品の流入被害が急速に拡大している。
現行の商標法では、「業として」国内事業者が模倣品の輸入等を行った場合に、商標権侵害となる(商標法第2条第3項)。
しかしながら、「個人使用の目的」で輸入された模倣品については、現行の商標法では権利侵害を問えないことから、個人で輸入された模倣品については国内への流入を阻止できておらず、早急な対策が求められている。
このような状況に鑑み、たとえ「個人使用の目的」であったとしても、輸入目的に関係なく模倣品の流入を阻止できるよう、特許庁では商標法、財務省では関税法の改正を検討している。この改正により、個人使用の目的で輸入された物品であっても、商標権を侵害していると判断された場合は税関での差し止め対象となることが期待される。
(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2020/12/01
特許の哲学 其の54
意匠登録出願手続の簡素化
令和3年4月1日より改正意匠法が 施行され、より意匠登録出願の手続が 簡素化されることが期待される。主な 施行内容は次の3つである。 @複数意匠一括出願の導入: (現行)意匠ごとに願書を作成する必 要がある (改正)複数の意匠をまとめた願書の 作成も可能となる A物品区分の扱いの見直し: (現行)願書に記載すべき物品の区分 を「物品区分表」により定める (改正)「物品区分表」を廃止し、物品 の区分に係る一般的な基準を経済産 業省令が新たに設ける B手続救済規定の拡充: (現行)指定期間が経過した後や優先 期間が経過した後の出願等の救済が 認められていない (改正)指定期間が経過した後や優先 期間が経過した後の出願等の救済を 認める (特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2020/10/31
特許の哲学 其の53
「営業秘密」の保護と管理
企業が保有する技術や情報等の資産は、オープン化した上で特許権等の知的財産に係る権利を取得し活用する方法と、クローズ化して秘密として管理し活用する方法がある。
企業は、いわゆるオープン・アンド・クローズ戦略として、経営戦略上どのような方法・組合せを採用するか適切な判断が求められている。
秘密として管理している情報、いわゆる「営業秘密」については、不正競争防止法で「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう」と定義され、保護されている(第2条第6項)。
この営業秘密に係る不正行為(窃取等の不正の手段によって営業秘密を取得し、自ら使用し、若しくは第三者に開示する行為等)をした場合、損害賠償等の責任が生じるが、営業秘密として保護されるためには以下3つの要件を満たすことが必要である。
@秘密管理性:秘密として管理されている、A有用性:有用な営業上又は技術上の情報である、B非公知性:公然と知られていない。(特許業務法人共生国際特許事務所所長)