佐藤英昭の「特許の哲学」

2022/04/29
特許の哲学 其の71

マルチマルチクレームの制限

「マルチマルチクレーム」とは、マルチクレーム(2以上の請求項を択一的に引用する請求項)を引用するマルチクレームのことで、日米欧中韓の主要庁のうち、日本・欧州は認めているものの、日本から多くの出願がされている米国・中国・韓国においては制限されている。
(例)
・請求項1 Aを備える装置。

請求項2さらにBを備える請求項1 に記載の装置。

・請求項3さらにCを備える請求項1又 は2に記載の装置。(←マルチクレーム) ・請求項4 さらにDを備える請求項1 〜3のいずれか1項に記載の装置。 (←マルチマルチクレーム)  「マルチマルチクレーム」について は、一の請求項を把握するにあたって、 その請求項が引用する全ての各請求 項の記載を組み合わせて把握すること が必要であるなど、第三者による監視 や審査処理において過度な負担を生じさせる要因である。  

そこで、国際調和並びに審査負担及び第三者の監視負担の軽減の観点から、日本でも「マルチマルチクレーム」の制限を導入する。この制限は、省令改正の施行後(施行日:令和4年4月1 日)にする特許出願に適用される。
2022/03/30
特許の哲学 其の70

国際特許出願件数、 中国が3年連続世界1位

世界知的所有権機関(WIPO)は、特許協力条約(PCT)に基づく2021年の国際特許出願件数を発表した。  
それによると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの中にありながらも、2021年はPCT国際特許出願件数が過去最高を更新したと明らかにした。  
国際特許出願件数の増加率は+0.9%と微増ながらも、過去最高の277,500件となった。  国別では、中国の出願件数が69,540件となり、3年連続で世界1位となった。  
企業別では、中国企業13社がトップ 50に入り、前年から1社増加。通信機器大手の華為技術(Huawei)は6,952件と5年連続で首位の座を守り、中国企業の出願件数増加が目立つ結果となった。 (特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2022/03/01
特許の哲学 其の69

賊版対策で国際組織を創設

映画、アニメーション、マンガ等の海賊版被害がグローバル規模で問題となっている。しかしながら、国際連携が進んでいないことから、日米中韓等の主要国の著作権保護団体は、海賊版対策に取り組む国際組織「国際海賊 版対策機構/International Anti-Pi racy Organization(IAPO)」を2022 年4月に創設することを決定した。  
日本のコンテンツ海外流通促進機構(CODA)や米国のモーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)、韓国の韓国著作権保護院(KCOPA)、中国の中国版権協会、さらにASEAN各国が参加する予定。  
デジタル化・ネットワーク化の拡大や、コロナ禍による在宅需要の影響なども受け、日々海賊版が状況は深刻化 している。日本国内の海賊版による被害額は漫画だけで2021年1〜10月に 約8000億円に上る。  
IAPOは各国間でホットラインを設置し、海賊版問題の最新情報を共有 することで各国の海賊版対策の向上を目指すとしている。 (特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2021/12/23
特許の哲学 其の67

海外からの模倣品流入への規制強化

近年、電子商取引の発展等を背景に、「海外の事業者」が「国内の個人」に対し少量の模倣品を郵便等で直接販売・送付する事例が急増している。

 商標権等を侵害する物品は税関での没収等の対象となるが、侵害となるのは「事業性のある行為」に限られるため、「個人使用」の目的で模倣品を輸入する行為には商標権等の侵害が成立せず、現状、こうした輸入に係る物品は税関での没収等の対象とならない

 これまで侵害の成否が明らかでなかった「海外事業者の行為」について、模倣品を郵送等により日本国内に持ち込む行為が侵害行為となることを明確化するべく、商標法等の改正が2022年4月1日に施行されることとなった。

 具体的には、商標法に於いて「この法律において、輸入する行為には、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為が含まれるものとする」(第2条第7項)旨が追加された。

 この法改正により、模倣品が個人輸入される場合についても税関における水際取締等の規制強化が期待される。
(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2021/12/01
特許の哲学 其の66

ハッシュタグを用いた 「#他社商品名」は商標権侵害

インターネット上では、ハッシュマーク「#」がついたキーワード、いわゆる 「ハッシュタグ」が多く使用されている。 この「ハッシュタグ」を活用することで、その記号つきの発言が一覧できるよう になり同じキーワードでの投稿を簡単に検索できると言ったメリットもある。

この「ハッシュタグ」を巡って商標権 侵害が争われた。2021年9月27 日、大阪地方裁判所はフリマアプリ「メルカリ」などの商品ページで、ハッシュタグ「#他社の商品名」を用いて類似出品物を宣伝する行為については、商標権侵害と認め、表示の差し止めを命じる判決を言い渡した。  
本判決は、他人の商品名を表示した上で、自作の商品を反復継続して販売していたという事案である。訴えられたのは、フリマアプリに1000件以上の手作り商品を出品していた個人で、商品に原告のブランド名のハッシュタグをつけていた。メルカリは「出品した商品と関係のないタグ付けは、商品削除や利用制限の対象となる場合がある」と注意喚起している。(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2021/10/31
特許の哲学 其の65

中国・台湾がTPPに加入申請

中国が2021年9月16日に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)へ の加盟を申請し、その1週間後の23日 に台湾も加盟申請を発表した。中国と台湾が相次いでTPP加入を申請したことを受け、参加11カ国の判断が注目されている。
 しかしながら、中国の加盟に向けた課題は多い。中国がTPPに加入するには、知的財産権の保護、国有企業の優遇制限、政府調達の透明性確保など、TPP協定が定める厳格なルールを順守することが前提となる。
 特に障害となり得るのがデータを巡るルールだ。TPPはデータ流通の透明性や公平性を確保する原則を定めている。これは既存の多くのFTAが盛り込めなかったもので、専門家の間では 「TPPスタンダード」と呼ばれている。
中国は、企業や個人による国境を越えた自由なデータの流通には否定的だ。 データ安全法(データセキュリティー法)などで統制を強化する中国がルールを守れるか疑問の声が上がる。中国が加入するには、多くの分野で中国国内の制度改革を迫られるのが実態だ。 (特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2021/10/01
特許の哲学 其の64

知的財産取引に関するガイドライン公表

中小企業庁では「知的財産取引に関するガイドライン」を作成した。これは、大企業と中小企業間における知的財産に係る取引について、問題事例を防止するとともに、知的財産取引における企業間の共存共栄を推進する観点で策定されたものである。

ガイドラインの主なポイント:
@
契約締結前:

相手方の秘密情報を相手方の事前の承諾なく、取得又は開示を強要しない

相手方の意思に反して、秘密保持契約締結無しに相手方の秘密を知り得る行為をしない。
A
試作品製造・共同開発等:

無償の技術指導・試作品製造等の強制をしない

承諾がない知的財産やノウハウ等の利用をしない

共同開発の成果は技術やアイディアの貢献度によって決められることが原則、これと異なる場合は相当の対価を支払う、


B
特許出願・知的財産権の無償譲渡・無償許諾:

取引と直接関係のない、又は独自に開発した成果について出願等に干渉しない
相手方に帰属する知的財産権について、無償譲渡の強要や自社への単独帰属を強要しない。(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2021/09/01
■ 特許の哲学 其の63

特許無効審判における 通常実施権者の承諾を不要に

 特許法は、特許権者自らが実施をしなくとも、他の者に実施の権原を与える制度として専用実施権(特許法第77 条)及び通常実施権(同法第78条)の制度を用意し、特許法の目的である発明の利用の促進を図っている。
 現在、特許権者が訂正請求(願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面の訂正の請求)を行う際、通常実施権者がいる場合はその全員から 承諾を要する。
 しかしながら、1つの特許権について数百を超える通常実施権者が存在するケースもあり、このような場合には全ての通常実施権者から承諾を得ることは容易ではない。
 このことから、政府は、訂正請求の際に通常実施権者の承諾を不要とする特許法改正案を閣議決定した。この改正により、今まで煩雑であった通常実施権者全員からの承諾を得る必要がなくなり、より簡便に手続が可能となる。
 今回の改正案では、通常実施権者の承諾は不要としたが、専用実施権者がいる場合には専用実施権者からの承諾を得なければ訂正請求を行えない規定は残されている。  
(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2021/07/30
「特許の哲学」 其の62

日本、自動運転の特許出願件数で 世界一位

 特許庁は、今後の市場確定が見込まれる「機械翻訳」「スマート農業」「自動運転」等の技術テーマについて、特許出願状況の調査結果をまとめた。
 この調査は、企業・大学・研究機関などが開発戦略や知的戦略を策定するために世界中の特許情報を分析したものであり、これによると「自動運転」関連技術の出願件数(2014〜2018年)の合計は53,394件となり、国別では日本の20,008件が最も多く1位となった。その他の各国主要国の順位は以下の通り。

1位:日本(20,008件)
2位:アメリカ(11,311件)
3位:ドイツ(7,824件)
4位:韓国(5,359件)
5位:中国(4,965件)
6位:欧州 ※ドイツ除く(3,062件)
 この調査にて、「自動運転」の関連技術に関しては広範囲にわたり日本から多くの特許出願がなされていることが確認された。
 今後、自動運転の開発が活発化していくことで、あらゆる交通手段の統合・ 最適化が可能となり、より快適なサービスの提供が期待される。  
(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2021/07/03
『特許の哲学』 其の61

特許法の改正案が成立

令和3年5月14日、特許法等の一部を改正する法律案が国会で成立した。
 新型コロナウイルスの感染拡大により、「非接触」の生活様式が浸透してきており、電子商取引の急伸に伴う模倣品の流入や、情報通信分野等における特許ライセンスの大規模化及び複雑化等、消費行動や企業活動も変化してきた。
 これらの生活様式及び経済活動の変化に対応した策を講じるとともに、知的財産制度を安定的に支える基盤を構築することが必要なことから、デジタル化、リモート・非接触など、以下の内容を柱とした改正となっている。
(1)
デジタル化等の手続の整備
 ウェブ会議システムの利用、窓口でのクレジットカード支払等を導入等
(2) デジタル化等の進展に伴う企業行動の変化に対応した権利保護の見直し、増大する個人使用目的の模倣品輸入に対応し、海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為を商標権等の侵害として位置付ける等
(3)知的財産制度の基盤強化   
特許権侵害訴訟において、裁判所が広く第三者から意見を募集できる制度を導入等
(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
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