佐藤英昭の「特許の哲学」

2020/04/02
特許の哲学 其の46

音楽教室での著作権使用料徴収権限を認める

 ピアノ教室等のレッスンで使われる楽曲の著作権をめぐり、音楽教室を運営する約250の事業者等がJASRAC(日本音楽著作権協会)を相手取り、音楽教室で演奏される曲の著作権
使用料を徴収する権利がないことの確認を求めた訴訟で、東京地方裁判所は、JASRACに徴収権限があるという判断を示し、教室側の請求を棄却した。
音楽教室での著作権使用料をめぐり、初めて司法判断が示された。
 裁判では、音楽教室での楽曲の使用が公衆に聞かせる目的かどうかが争点となり、音楽教室側が「レッスンは生徒と先生しかおらず、公衆に聞かせる演奏ではない」と主張したのに対し、JASRAC側は「生徒は不特定多数の人にあたり公の演奏だ」と主張していた。
 判決では「楽曲利用者は生徒や教師ではなく事業者である音楽教室だ。生徒は申し込んで規約を結べば、誰でもレッスンを受けられるので不特定多数の公衆に当たる」として、JASRACは音楽教室に使用料を請求できるという判断を示し、教室側の訴えを退けた。
(特許業務法人:共生国際特許事務所長)
2020/04/02
特許の哲学 其の45

米中が知的財産権の保護強化で合意

 米中両政府は、貿易協議をめぐる「第一段階」の合意文書に署名した。
第一段階の合意には、知的財産権の保護や技術移転の強要禁止などの項目が盛り込まれた。
 具体的には、模造品や偽造品の取り締まりを強化する。オンライン環境での侵害に対して、効果的で迅速な行動を義務付ける。
 電子商取引プラットフォームへの効果的な行動、偽造医薬品や関連製品への効果的な執行措置、国内や輸出される海賊品や偽造品への執行措置を強化する。
 米国のブランド品の保護を図るため、悪意ある商標登録を無効にしたり、却下したりするような対策を求める。
 技術移転に関しては、中国が市場アクセスや行政承認または利益の受け取りを条件に、外国企業に技術移転の圧力をかけることを禁じている。
 ただ、米国が問題視していたハイテク産業や国有企業を支援する補助金の見直しなど、中国の構造改革をめぐる問題は先送りされた。
 だが、米国が市場国重視の考え方を推し進めれば、それが世界標準になり、日本企業のグローバルな税務・理財戦略にも影響を与える可能性がある。
(特許業務法人:共生国際特許事務所長)
2020/01/31
特許の哲学 其の44

アマゾンジャパン「プロジェクトゼロ」〜偽造品対策を強化〜
 
 アマゾンジャパンは偽造品の撲滅を目指す「プロジェクトゼロ」を開始したと発表した。
 協力ブランドと製品やロゴなどの情報を共有し,AIの画像認識などで偽造品の疑いがある商品を除外する精度を高める。ブランド各社がサイト上で偽ブランド品を発見した場合,直接削除できる機能も提供する。
 2020年前半には商品1つずつにアマゾンやブランドが独自のシリアルコードを発行し,疑わしい商品の発送前の段階などで真偽をチェックできる仕組みも導入する。
 プロジェクトへの登録は現在招待制となっており,米国と欧州では約6,000以上のブランドが参加しているという。日本国内では,パナソニックやアイリスオーヤマ,任天堂,ソニー・インタラクティブエンタテインメント,アイロボット,川崎重工,タカラトミー,ダダリオなどの企業が試験運用を開始している。
2019/12/27
特許の哲学 其の43

改正意匠法等,2020年4月1日施行

〜デザインの保護対象の拡充等〜
 
 特許法,意匠法等の一部改正に関する法律が閣議決定され,2020年(令和2年)4月1日より施行されることとなった。今回の改正では,特に意匠法が大幅な改正となり,より広い範囲の意匠権の取得が可能となる。
 主な改正内容は次の通り。
@保護対象の拡充(画像,建築物の内・外装のデザインも保護)
A関連意匠制度の拡充(・関連意匠の出願可能期間を本意匠の登録の公表日迄(8か月程度)から本意匠の出願日から10年以内迄に延長・関連意匠にのみ類似する意匠の登録を認める)
B意匠権の存続期間の変更(登録日から20年を出願日から25年に変更)
これまで意匠登録できなかったクラウド上の画像の意匠や住宅・建築物の内外装デザインが保護可能となり,2020年(令和2年)4月1日以降に意匠出願できるようになる。
この他,特許法の損害賠償額算定方法の見直し(実用新案・意匠・商標も準用)も2020年(令和2年)4月1日より施行される。

2019/12/18
特許の哲学 其の42

店舗の外観・内装 立体商標で保護へ
 
 特許庁は,企業のブランディング活動を支援する必要性を踏まえ,商品・役務の出所を表示するものとして識別力を有する店舗の外観・内装については,商標として保護する方向で検討を進めている。
 店舗の外観・内装は,特に大規模チェーン店等では統一したデザインで使用され,企業や店舗のブランディングのための保護ニーズが高まっている。実際に店舗の外観・内装を模倣する事例も多く,商品等の出所を示す外観は,例えば米国では,いわゆる「トレードドレス」(米国商標法上の定義はなく,商品形状,包装容器の形状の他,飲食店等の外観や内装も含まれる)として保護されることがある。国によって保護対象や法制度も異なっている。
特許庁では,現行の商標制度の見直しにあたり,店舗の外観・内装以外の立体的形状についても併せて検討することが望ましいとして,立体商標制度の見直しと立体商標等に関する審査運用の見直しについて検討を進める方針。
2019/11/15
特許の哲学 其の41

知財侵害物品の差止状況
輸入差止申立制度の活用
 
 財務省は,令和元年上半期の全国の税関における偽ブランド品等の知的財産侵害物品の差止状況を発表した。輸入差止件数は12,844件(前年同期比:7.3%減),輸入差止点数は577,534点(前年同期比:14.7%減)。
 仕出国(地域)別の輸入差止件数では,中国が全体の83.7%(10,752件)を占めた。品目別では,医薬品(377件,前年同期比:66.0%増),煙草及び喫煙用具,美容品等,健康や安全を脅かす危険性のある知的財産侵害物品の輸入差止が増加。侵害された権利は,商標権が最多(輸入差止件数:96.8%,輸入差止点数:88.6%)。
 輸入差止申立制度とは,特許権,実用新案権,意匠権,商標権,著作権等を侵害する貨物が輸入されようとする場合,権利者が税関長に対し,自己の権利を侵害する貨物の輸入を差止めるよう申し立てる制度。裁判に比べてコストがかからず,結果が出るのが早いのもメリットといえる。
2019/10/03
特許の哲学 其の39

IoT関連技術に関する
国際特許分類(IPC)新設
 
 IoT(Internet of Things)関連技術に関して,2020年1月から新たな国際特許分類(IPC)として,分類「G16Y」が新設される。従来の分類(ZIT)は日本固有の特許分類であるが,こちらはIPCのため世界共通の分類となる。
 G16Yは,ZITの付与観点「業種」に加え,「モノにより探知又は収集された情報」「IoTインフラストラクチャ」「情報処理の目的に特徴があるIoT」という新たな観点で分類され,その定義については以下のように変更されている。
(1)ZITではネットワークに接続されたものであるのに対して,G16Yではインターネットに接続されたものに限定。
(2)ZITでは「新たな価値・サービスを創造する」との観点から,単にネットワークと接続している技術を排除しているのに対して,G16Yでは,汎用の計算機・通信機器,単なる監視・制御といった汎用的な機器や機能を付与対象から除外。
2019/08/26
特許の哲学 其の38

訴訟のIT化を目指す  商標の審査期間を短縮

〜知的財産推進計画2019〜
 
 政府の知的財産戦略本部は,2019年の知的財産推進計画を決定した。
 「知的財産推進計画2019」では,知財訴訟をはじめとした民事訴訟手続きなどのIT化に向け,年度内にも法制審議会(法相の諮問機関)へ諮問する方針を打ち出した。
 民事訴訟手続きのIT化は,裁判の迅速化や利便性の向上が狙いで,昨年3月の有識者会議の提言を受け,法務省を中心に検討を進めている。具体例として,訴訟記録の全面電子化,オンラインでの書面提出やウェブ会議による手続きを可能とするなどを挙げた。2019年度中の法制審議会への諮問を目指し,具体的検討を引き続き進めるとしている。
 近年,商標出願件数の大幅な増加で商標の審査期間が長期化していることを踏まえ,2022年度末までに一次審査通知までの期間を6.5ヶ月とすることにより,権利化までの期間を国際的にそん色のないスピードである8ヶ月にできるよう,商標審査体制を強化する方針。
2019/07/16
特許の哲学 No37

改正意匠法が成立

主な改正ポイント
 
 製品の形状やデザインを保護するための改正意匠法が令和1年5月10日参議院で可決,成立した。多岐にわたる改正項目のうち主なポイントについて取り上げる。
(1)画像デザインの保護:@操作画像や表示画像について,画像が物品に記録・表示されているかどうかにかかわらず保護対象とするA壁や道路等に映写される画像なども保護対象に。
(2)空間デザインの保護:現行法の保護対象である物品(動産)に加え,建築物(不動産)の外観や内装も保護対象に。
(3)関連意匠制度の拡充:@関連意匠の出願可能期間を本意匠の出願日から10年以内までに延長A関連意匠にのみ類似する意匠の登録を認める。
(4)意匠権の存続期間の延長:「登録日から20年」を「出願日から25年」に延長。
(5)複数意匠一括出願の導入:1つの願書で複数の意匠の出願を認める。但,1つの意匠毎に1つの意匠権を発生させる原則は維持し,実体審査や意匠登録は現行と同じく意匠毎に行う。 
2019/06/12
特許の哲学 其の36

特許異議申立により6割超が特許権縮減
 
 特許庁は,特許異議申立の最新の統計情報(申立日が平成27年4月〜平成29年9月末)を公表した。特許異議申立の件数は,平成27年4月に特許異議申立制度が開始されて以降,累計で3903件となり,そのうち3049件(約78.1%)が最終処分に至っている。
 現時点では異議申立によって取消決定が出される率は11.3%と低いようだが,特許権者が訂正をして維持決定がされた案件と,特許権者が申し立てにより請求項を削除した案件とを加えると,実質的な異議申立ての「成功率」は60%を超えていることがわかる。
 特許異議申立は,特許掲載公報発行日から6カ月と期間は限られているが,基本的に特許庁と特許権者の間で手続が進むため,手間やコストの面において無効審判よりも有利といえる。
 今後,競合他社の特許権の範囲を狭めたいと思われる場合には,異議申立制度の活用を検討されたい。(特許庁HP「特許異議申立の統計情報」より)。
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