佐藤英昭の「特許の哲学」

2019/11/15
特許の哲学 其の41

知財侵害物品の差止状況
輸入差止申立制度の活用
 
 財務省は,令和元年上半期の全国の税関における偽ブランド品等の知的財産侵害物品の差止状況を発表した。輸入差止件数は12,844件(前年同期比:7.3%減),輸入差止点数は577,534点(前年同期比:14.7%減)。
 仕出国(地域)別の輸入差止件数では,中国が全体の83.7%(10,752件)を占めた。品目別では,医薬品(377件,前年同期比:66.0%増),煙草及び喫煙用具,美容品等,健康や安全を脅かす危険性のある知的財産侵害物品の輸入差止が増加。侵害された権利は,商標権が最多(輸入差止件数:96.8%,輸入差止点数:88.6%)。
 輸入差止申立制度とは,特許権,実用新案権,意匠権,商標権,著作権等を侵害する貨物が輸入されようとする場合,権利者が税関長に対し,自己の権利を侵害する貨物の輸入を差止めるよう申し立てる制度。裁判に比べてコストがかからず,結果が出るのが早いのもメリットといえる。
2019/10/03
特許の哲学 其の39

IoT関連技術に関する
国際特許分類(IPC)新設
 
 IoT(Internet of Things)関連技術に関して,2020年1月から新たな国際特許分類(IPC)として,分類「G16Y」が新設される。従来の分類(ZIT)は日本固有の特許分類であるが,こちらはIPCのため世界共通の分類となる。
 G16Yは,ZITの付与観点「業種」に加え,「モノにより探知又は収集された情報」「IoTインフラストラクチャ」「情報処理の目的に特徴があるIoT」という新たな観点で分類され,その定義については以下のように変更されている。
(1)ZITではネットワークに接続されたものであるのに対して,G16Yではインターネットに接続されたものに限定。
(2)ZITでは「新たな価値・サービスを創造する」との観点から,単にネットワークと接続している技術を排除しているのに対して,G16Yでは,汎用の計算機・通信機器,単なる監視・制御といった汎用的な機器や機能を付与対象から除外。
2019/08/26
特許の哲学 其の38

訴訟のIT化を目指す  商標の審査期間を短縮

〜知的財産推進計画2019〜
 
 政府の知的財産戦略本部は,2019年の知的財産推進計画を決定した。
 「知的財産推進計画2019」では,知財訴訟をはじめとした民事訴訟手続きなどのIT化に向け,年度内にも法制審議会(法相の諮問機関)へ諮問する方針を打ち出した。
 民事訴訟手続きのIT化は,裁判の迅速化や利便性の向上が狙いで,昨年3月の有識者会議の提言を受け,法務省を中心に検討を進めている。具体例として,訴訟記録の全面電子化,オンラインでの書面提出やウェブ会議による手続きを可能とするなどを挙げた。2019年度中の法制審議会への諮問を目指し,具体的検討を引き続き進めるとしている。
 近年,商標出願件数の大幅な増加で商標の審査期間が長期化していることを踏まえ,2022年度末までに一次審査通知までの期間を6.5ヶ月とすることにより,権利化までの期間を国際的にそん色のないスピードである8ヶ月にできるよう,商標審査体制を強化する方針。
2019/07/16
特許の哲学 No37

改正意匠法が成立

主な改正ポイント
 
 製品の形状やデザインを保護するための改正意匠法が令和1年5月10日参議院で可決,成立した。多岐にわたる改正項目のうち主なポイントについて取り上げる。
(1)画像デザインの保護:@操作画像や表示画像について,画像が物品に記録・表示されているかどうかにかかわらず保護対象とするA壁や道路等に映写される画像なども保護対象に。
(2)空間デザインの保護:現行法の保護対象である物品(動産)に加え,建築物(不動産)の外観や内装も保護対象に。
(3)関連意匠制度の拡充:@関連意匠の出願可能期間を本意匠の出願日から10年以内までに延長A関連意匠にのみ類似する意匠の登録を認める。
(4)意匠権の存続期間の延長:「登録日から20年」を「出願日から25年」に延長。
(5)複数意匠一括出願の導入:1つの願書で複数の意匠の出願を認める。但,1つの意匠毎に1つの意匠権を発生させる原則は維持し,実体審査や意匠登録は現行と同じく意匠毎に行う。 
2019/06/12
特許の哲学 其の36

特許異議申立により6割超が特許権縮減
 
 特許庁は,特許異議申立の最新の統計情報(申立日が平成27年4月〜平成29年9月末)を公表した。特許異議申立の件数は,平成27年4月に特許異議申立制度が開始されて以降,累計で3903件となり,そのうち3049件(約78.1%)が最終処分に至っている。
 現時点では異議申立によって取消決定が出される率は11.3%と低いようだが,特許権者が訂正をして維持決定がされた案件と,特許権者が申し立てにより請求項を削除した案件とを加えると,実質的な異議申立ての「成功率」は60%を超えていることがわかる。
 特許異議申立は,特許掲載公報発行日から6カ月と期間は限られているが,基本的に特許庁と特許権者の間で手続が進むため,手間やコストの面において無効審判よりも有利といえる。
 今後,競合他社の特許権の範囲を狭めたいと思われる場合には,異議申立制度の活用を検討されたい。(特許庁HP「特許異議申立の統計情報」より)。
2019/04/23
特許の哲学 其の35

IOCが「五輪」を日本で商標登録<ブランド保護と便乗対策>
 
 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え,国際オリンピック委員会(IOC)が,オリンピックを意味する漢字2文字の「五輪」について,特許庁に商標登録を出願し,認められた(登録日:2019年2月1日,登録番号:第6118624号)。東京五輪に関し,呼称やマークを使用できる公式スポンサーの権利を守り,便乗商法を防ぐことが目的とみられる。
 飲食物や装飾品等に「五輪」の文字を入れ,東京五輪大会を想起させる表現をすることは,いわゆる「便乗商法」として不正競争行為に該当する恐れがあり,IOCやJOCから使用の差し止め要請や損害賠償請求を受ける可能性がある。
 大会組織委員会は,不正便乗商法の恐れがある表現として「オリンピック開催記念セール,2020円キャンペーン」等を例示しているが,商業利用に当たるかどうかの判断は事案によって異なることから,今後,混乱が生じないよう周知や啓発を徹底していく方針。
2019/04/03
特許の哲学 其の34

著作権等の保護期間の延長
 
 TPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)が2018(平成30)年12月30日に発効したことにより,著作物等の保護期間の延長を含めた著作権法改正が同日から施行された。
 これを受け,文化庁は,著作物等の保護期間延長に関するQ&Aを公表した。
 著作物等の保護期間は,死亡,公表,創作した年の「翌年の1月1日」から起算する。改正前の著作権法においては,著作物等の保護期間は,原則として著作者の死後50年までとされていたが,このたびの法改正により,原則として著作者の死後70年までとなった。
 例えば,Aさんの著作物は,Aさんが1968(昭和43)年に亡くなったので,1969(昭和44)年1月1日から起算して,これまでは50年後の2018(平成30年)12月31日まで保護されるとされていたが,改正後は,70年後の2038年12月31日まで保護されることとなった。
2019/02/27
『特許の哲学』 其の33

特許料等の軽減措置<全ての中小企業に拡充>2019年4月1日施行
 
「不正競争防止法等の一部を改正する法律」の一部を施行するための関係政令が昨年末に閣議決定され,2019年4月に施行される。改正法により,これまでの一部の中小企業が対象だった特許料,審査請求料及び国際出願関連手数料の軽減措置が,すべての中小企業に拡充される。
現状では,所定の要件を満たしている中小企業のみが,必要な証明書を提出する等の手続を行うことで,特許出願した発明について特許庁で審査を受けるための審査請求料や特許料(1〜10年分)について1/3に減免される措置を受けることができる。
4月1日以降は,すべての中小企業が審査請求料,特許料(1〜10年分)が現状の半分程度に減免される措置を,証明書提出等の手続を行うことなしに,一律に受けることができる。
また,一律半減措置が施行される前に行われていた特許出願について,施行後に審査請求する場合であっても半減措置を受けられる。
2019/01/25
特許の哲学 其の32

1996(平成8)年〜1999(平成11)年の特許・技術動向
 
1996(平成8)年,商標法条約加入に伴う改正並びに不使用取消審判制度改善,連合商標制度廃止,異議申立制度の登録後への移行,標準文字制度採用,周知商標保護強化のための不登録事由追加,立体商標制度創設,団体商標制度明確化,商標登録料分割納付制度採用,現金納付制度導入,指定商品書換制度創設,商標権侵害罪に係る法人重課の適用等並びに民事訴訟法の改正に伴う改正が行われた。
・松下電器とパイオニアがDVDプレイヤーを発売
・電子機械工業の生産額は24兆4300億円で自動車を抜く
・NTTの分割発表,長距離部門の国際通信への進出が始まる
 1998(平成10)年損害賠償制度・意匠制度見直し,ペーパーレスシステムの意匠・商標への拡大,国と国以外の者との特許権等の共有に係る特許料等の減免等並びに種苗法の改正に伴う改正が行われた。
・1999(平成11)年 NTTドコモがインターネットに接続する携帯電話iモードを発表。
2019/01/25
特許の哲学 其の31

1970
(昭和45)年から10年間の特許・技術動向
〈後半〉
1978年(昭和53)年、特許協力条約への加盟に伴う新法の制定及び同条約に基づく国際出願の開始、並びに農産種種苗法の一部改正に伴う改正が行われた。
1978年 東芝が日本語ワードプロセッサーを発売
1979年 日本電気がパソコンPC8001を発売、64kDℛAⅯ出荷が1始まり80年代の世界市場を圧巻   
1980年 富士通ファナックでロボットによるロボット生産、自動車の生産台数は1104万台で世界首位
1981年 東海村では動燃再処理工場が操業開始
1982年 民事訴訟法等の一部改正に伴う改正、ソニーがCDプレイヤーの販売開始、本田技研がオハイオ工場での操業開始 
1983年 国家行政組織法の一部改正に伴う改正、初の通信衛星さくら2号aを宇宙開発事業団NUロケットにやり打ち上げ、工作機械の生産額が世界首位
1984年 特別会計法の制定に伴う改定、ガットが日本の工業製品輸出額が世界首位と発表
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