佐藤英昭の「特許の哲学」

2016/07/29
特許の哲学 其の3

特許を制する国が、世界を制する

特許の文字には、特別の許可、独占的許可、特権の賦与の意味があります。
しかし、特許は、各国でパテント(Patent)と称されております。ラテン語のPatentes
(開くの意)に由来し、イギリス中世の国王に発する開封特許状(Literal Patentes)、すなわちLetter Patentになったものであります。
 世界における特許制度は、15世紀にイギリス国王が都市、「ギルド」、特定商人に独占の特権を与えたのに発しております。しかし、既に古代ギリシャの都市レバリスでは、特別な料理の考案者には1年間の独占権を与えたといわれております。また、1474年のヴェネチェア共和国の特許法で発明者に10年間の特許権が認められております。ガリレオ・ガリレイは、1594年揚水装置についてヴェネチェア共和国から特許を受けております。
 特許制度は、人口わずか20万人の資源の乏しい都市国家から始まり、その後、オランダを経由して、イギリスに伝わり、現在われわれの有する特許制度の基礎になったものであります。
 中世のイギリスは、ヨーロッパのなかで後進国であり、産業の振興が重大政策の一つであったからであると考えられます。
 当時の特許制度は、今日のような発明に与える特許制度ではなく、特種の営業に与える特許制度でありました。当時イギリスでは外国貿易発展策として、特定の貿易業者に(東インド商会が東インドの貿易を独占)、また王室の財政上の援助をした者に一定の地域または一定の商品を限って製造、販売の特権を独占させたものであります。
 その後、「エリザベス」女王の時代には、この制度が、王室の収入増加のために濫用されるようになりました。時恰も、自由民権の思想の盛んな時代でありましたから、国会は、裁判所に対し、女王が営業に与えた特許が、是認されるべきか否かを審理せしめ、1623年に、特許は発明にのみ与えられるものであると判決され、1624年成立したのが、専売条例(State of Monopolies)であり、1760年代の紡績機械の発明に始まる産業革命の受け皿を準備したものでありました。こうして今日のイギリスの発明特許の制度が確立されました。
 ドイツ、フランス、イギリス以外の諸国も次第にこれに倣い、世界の発明特許制度が確立されました。わが国においても、徳川時代に、貨幣の鋳造、度量衡器の製造、販売その他の特権の商品の製造販売の許可を特許と称していたけれども、今日においては、特許の文字は、発明の奨励、保護の法律である特許法の独占用語となりました。
 永年使用され、社会通念として、特許発明の文字は登録発明の意味に観念され、特許、「パテント」の文字は、国際的に特種の一定した意味を有するに至っております。
 特許は、資源の乏しい国、弱い国、後進国で制度として確立したが、特許を制する国が、世界を制することになるのであります。(特許業務法人共生国際特許事務所佐藤英昭所長)

2016/05/30
特許の哲学  其の2

発明や特許の基本的理由

「宇宙の法則」や「人間の尊
厳」との関係

 私は、つねづね、「発明」や「特
許」に関する教科書や論文には、種々の関係から、最も重要と思われるものが欠けていると思っております。
 それは、発明や特許の基本的理由として「宇宙の法則」や「人間の尊厳」言い換えれば「宇宙の仕組み」や「人間の心の仕組み」と関連があるということをシステマティックに叙述することではないでしょうか?
 そこで、私は、ある程度、統一的な思想に基づいた「特許」と「発明」に関し、理解をもてるようなものを書いてみたいと思っていました。
 実は、上記のような希望から、これまで、いくつかの雑誌に若干の問題について書いて来たことではありますが、そうしたものも、ここに含まれております。ここでは、「発明」と「特許」についてしか論じていないが、他日、同種のもので残余の問題についても書いてみたいと思っています。粗末な内容のものではありますが、こんなものも、一つ位はあってもよいと考えております。
 これによって、「特許」と「発明」に関する諸問題に対する断片的な知識を統一するのに役立てば、幸いだと思うし、願わくば、一つの理論的体系に基づく発明・考案等知的財産の思考に習熟してもらいたいものであります。
 以上のような目的から、文献は、とにかく私自身の考えを理解してもらうのに必要な最小限度のものにとどめました。だれかれがどうだという前に、一人の実務家の一つの統一的な説明を理解してもらえたらと考えます。
 後人は先人の研究を基とし、技術が頼りになる強力な夫であり、法律が円満で公平な妻であり、特許発明は可愛い子供になるでしょう。(特許業務法人共生国際特許事務所佐藤英昭所長)
2016/04/27
佐藤英昭弁理士による『特許の哲学』 その@

「発明」や「特許」を真に理解してもらうためには
 
人類は、発明を人類共通の資産として、その発明の保護及び利用を図る特許制度を利用し、永遠の進化をとげるものであります。
私は、本紙の読者を対象に、「発明」や「特許」を真に理解してもらうため、いくつかの重要な点について自説を平明に述べてみたいと思っております。
読者の皆様は、発明というと、すぐにワットが発明した蒸気機関車が産業革命の口火を切ったとか、蓄音機や白熱電灯を発明したエジソンが発明王と言われたということを思い浮かべて、特別な親しみを感じることでしょう。
ところが発明や特許は、一度頭を突っ込んでみると、極め難く、当初の予想に反して難しい学問であることを知るでしょう。
成る程、内燃機関、電気、有機化学などの発明が産業の発達に貢献したことは良いこと、というぐらいは、極めて常識的な判断の帰結でありますが、ひとたび科学的に理由付けるとなると、それは難しいことであり、それだけにまた大切なことなのであります。
従って、私自身がそうであったように、多くの皆様方にとって、諸先生の講義を一偏聞いただけで、発明や特許を理解することは、極めて困難なことでしょう。
その上、一般に、特許法等の条文のことを知っているが、特許の基礎(考え方・思想)を基本的に理解しない場合もあります。そこで私は、自分自身が疑問に思ってきたことも含め、特許の基本的理解のために役立つであろうと思われることを、いくつか説明していきたいと思っております。
ここでは、いわゆる論文や教科書という形態のものではなく、約50年前から発明や特許に触れ、実務を通して今日に至るまで疑問に感じている「発明」や「特許」について、自説を試みたいと思っております。(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2016/04/27
佐藤英昭弁理士『特許の哲学』新コラムが始まります

特許に精通した筆者がわかりやすく解説してくれます

昨今、産業界においては「特許」等の知的財産に関する訴訟問題が増え続けています。そこで、「特許」の専門家である特許業務法人共生国際特許事務所の佐藤英昭所長に、「特許」についての考え方を解説してもらうコラムを毎月掲載することになりました。
同氏が約50年前から特許に触れ、実務を通して今日に至るまで疑問に感じている「特許」について自説を解いてもらうもので、大いに期待しております。
【経歴】1942年生まれ。弁理士登録後、佐藤国際特許事務所を設立(現在特許業務法人共生国際特許事務所として法人化)。当時としては最年少の若干32歳で東海通信機鰍フ更生管財人(静岡地方裁判所)を経験。ベトナム商工会議所顧問、東京国際大学理事・客員教授を務めている。現在74歳。経産省が主催する知的所有権セミナーをはじめ、日本発条や伊藤ハム他一般企業、更には京都大学大学院、崇城大学、チュー・ヴァン・アン大学等における多彩な講師歴を有しています。
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