佐藤英昭の「特許の哲学」

2017/07/05
『特許の哲学』其の15

発明に関する技術的思想とは
  
発明は無形の思想であり,物品の外形ではない。発明は,技術に関する人の知能的所産物である。発明は同一の効果を繰り出し,繰り返し,繰り返し生ずる技術的所産物である点に価値があるのであり,物理的,化学的の原理・原則に反するものは発明ではない。
しかし,発明者が物理的・化学的な原理・原則を知っていたかどうかは問題ではない。技術に関する人の知能的所産物である思想が,物理的・化学的な原理・原則に適合すればよい。
発明は,技術的効果を伴う必要があり,偶然一度効果を生じても,繰り返して同一の効果を生じないものは発明ではない。しかし,複雑,精巧な技術的思想である必要はない。
簡単なものでも,進歩性があるものは,発明を構成する。発明は技術に現れた芸術であり,技術に関する人の知能的所産である点が著作・美術(絵画,彫刻等)とは異なる点である。
従って,個人の熟練によって到達しうる技能や情報の単なる提示は発明とはならない。
2017/06/01
『特許の哲学』 其の14

「自然法則」を利用した発明とは
  
「自然法則」とは,自然現象の関係が,実証・帰納された規律をいうのであって,観念されただけでは法則ではない。これが,探求・実証・帰納され,組織的系統となって,初めて法則ということができるのである。
自然現象とは,自然に生起される状態,自然力とは,自然現象から生ずる作用である。引力,浮力,水力,熱力,風力,波力等はいずれも自然力であり,太陽熱,地熱,光,音,気圧,抵抗,風,雲,雨,雷,波,地震,噴火,電波,磁気,X線等は,いずれも自然現象であり,これらの自然現象を支配する法則が「自然法則」である。
従って,特許法上の発明は,自然法則を利用したものでなければならないから,自然法則自体(万有引力の法則等),人為的な取決(ゲームのルールそれ自体,数学上の公式等),また,自然法則に反する手段(永久機関等)に係るものや,課題を解決するための技術的手段が明らかに実現不可能なものは,発明に該当しないこととなる。
2017/06/01
『特許の哲学』 其の13

発明と特許の
理論的確立について

誰でも特許庁から特許を取得することが出来るが、特許に値するかどうかは、その発明の長所によってではなく、明細書を書く腕によって決まるのである。
歴史が社会経済的に重要だと教えているのは、特許が特許権侵害訴訟の裁判で勝ち残れるかどうかということである。
明細書を書き上げる際には、裁判所の判決の記録における判例や企業の特許戦略についての幅広い知識が極めて重要になる。
発明と特許の問題については、特許要件、特許権、特許出願手続き等のいずれもが、専門的分野からそれぞれに、深い理論づけと体系化への努力をして、それら一つ一つ、詳細な検討が行われるべきである。
発明と特許で、一つの理論を展開することが、必然的に他の理論を採る場合にも、たとえ批判的な眼をもってするにせよ、他の理論も考究し、基本的・実体的思想に基づきて、自己の心泰する理論の展開を図ってこそ、正しい発明と特許の理論的確立を期待できると信ずるものである。
2017/05/08
『特許の哲学』 其の12

発明と特許の理論的確立について
 
 誰でも特許庁から特許を取得することができるが,特許に値するかどうかは,その発明の長所によってではなく,明細書を書く腕によって決まるのである。
 歴史が社会経済的に重要だと教えているのは,特許が,特許権侵害訴訟の裁判で勝ち残れるかどうかということである。明細書を書き上げる際には,裁判所の判決の記録における判例や企業の特許戦略についての幅広い知識が極めて重要になる。
 発明と特許の問題については,特許要件,特許権,特許出願手続等のいずれもが,専門的分野からそれぞれに,深い理論づけと体系化への努力をし,それら一つ一つ,詳細な検討が行われるべきである。
 発明と特許で一つの理論を展開することが,必然的に,他の理論を採る場合にも,たとえ批判的な眼をもってするにせよ,他の理論をも考究し,基本的・実体的思想に基づいて,自己の心奉する理論の展開を図ってこそ,正しい発明と特許の理論的確立を期待出来ると信ずるものである。
2017/03/31
発明の価値について 11回
発明の価値について 11回
2017/03/02
特許の哲学 10

人類創造のよろこびは発明である
 
 全人類の歴史は,文化として人から人へ絶え間なく歴史の中で受け継がれ,歴史を創造する喜びにほかなりません。人間の知性は,人間の歴史そのものであり,知的創造は,歴史を創ることであり,発明の喜びは,昔も今も,世界人類の新しくかつ永遠の喜びであります。母が子を生むように,発明することは,補足・伝達の人間の知性・人類の喜びであり,ロボットはこの喜びをもたないのです。
特許法は第2条第1項に「この法律で発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と定義しています。多くの人は,発明の概念は完全に定義し得るものではないので,反って世人を誤らせる結果になるから定義的規定を設けるべきでないと主張していたし,私も,発明の概念は,時代により概念と範囲が変化しなければならないことを考えると,定義すべきではなく,運用に委ねるべきであったと思料するものであります。
2016/12/21
特許の哲学 9

人類最大の発明「言葉」

 私たちは,自分自身の中に全世界が反映しており,その反映された世界の中に自分自身が存在していることを意識しています。
 「我想う故に我有り」--デカルト
 人間は,肉体を進化・特殊化させた動物と異なり,自然に対し直接的だけでなく,間接的にも触れたとき,「なぜ?」と疑問が生じ,この疑問符が人類最大の発明である言葉を生むことになりました。
「話し言葉」と「書き言葉」とから成り立っている私たちの言葉は,単なるコミュニケーションの手段だけでなく,それ自体に,このような世界観を表現できる構造を持っているのです。換言すれば,こういう言葉を発明することができたため,宇宙観と死生観を形成することができたともいえます。
 動物の言語では,事物から概念が抽象されることはあっても,概念から概念がつくられることはほとんどありません。私たちの言葉は概念から概念がつくられます。
 この言語構造の世界は,その内部に宇宙を反映しているのです。
2016/12/14
『特許の哲学』 其の8

宇宙の原理と知識の複合

人間は,知性によって複合された経験的な事実を包括的に眺める段階になって,其々の経験は全て特殊なもの,単にうわべを感じとっただけのことであり,それらの底に流れる一般原理を意識しはじめ,発明として活用できるのです。
人間は,発明に一般原理を客観的に用いることで,環境を構成する物質資源を再配置することができるようになり,人類は全体として成功できるようになり,宇宙のさらに広範な,様々な問題にも対処する用意ができるようになると思われます。
 人間の知性は加速度的に優位に立ち,人間は生き延びる可能性を何百倍にも強めていきました。ギア,滑車,トランジスタ,そこに潜んだ梃子(てこ)の原理によって,「より少ないものでより多くのことをなす」ことが,物理,化学の多くの方法で可能となりました。物質的に利用できる一般原理を超物質的に感知して,それによって人間の生存と成功の可能性を知性的に高めていくことが発明なのです。
2016/11/07
特許の哲学 其の7

人間の「心」には宇宙の神性・霊性が宿っている

人類が初期の試行錯誤によって見出した能力開発の段階から,心は発明機能を有していた。人類は,裸で生まれ,「空腹」と「のどの渇き」とによって「蜜を求めて」飛び回るという生物的動きであっても,心の作用にうまく機能するよう,染色体にプログラムされていた。
人間はその心により,法則化された自然の地質的・気象的な変化にともなう生物種の再生的な相互循環が,世界中で複雑に補足的に作用し合う効果を事実上生み出してきたことを認識してきた。人間の心が,人間の知性により,優れた知性が宇宙に働いていることを直接的に経験してきた。
人間の心で,相互に引き合う方向に対して90度の角度の軌道を回る,超銀河系,銀河系,太陽系,恒星,衛星,彗星,小惑星,宇宙塵,未結合分子,原子,そして原子のなかの電子と同じように,人間関係においても,人は影響力の強い隣人のまわりを楕円形の軌道を描いて回っていることを経験してきた。
2016/09/06
特許の哲学   其の5

「発明」することが人間の特質である

人間以外の生物は,機能上きわめて専門的に動くようデザインされています。しかし,人間には,全方位とはいかないまでも,幅広い適応性が求められました。そのため,人間には,調整用のスイッチボードたる「頭」以外に「心」が与えられたのです。
人間は,「心」で,走る,飛ぶ,潜ることについての一般原理を習得・理解し,車,人工の翼や肺を発明することができました。鳥が走ったり歩いたりするには翼が邪魔になり,魚は海や池や川から出て陸を歩けません。鳥も魚もその道では,人間より優れた機能を肉体的に有しているのです。
 人間は,「霊長類」に属する哺乳類です。霊長類には人間が含まれることから,霊長類の最も高等な哺乳類であると思いがちです。しかし,最も原始的な哺乳類の一つが霊長類なのです。
原始的というのは,進化によって肉体の特殊化が進まなかったということです。ゾウの鼻やキリンの首には大きな特徴があるし,ウシやウマでも能率よく駆けるための四肢骨はある特定の骨が強大になり,他の骨は退化しています。霊長類は,モグラやジネズミなどの食虫類と互いに近縁関係にあり,その共通の先祖は長く哺乳類の原型に留まっていました。
環境の変化に応じ,他の哺乳類のようには肉体が進化できなかっただけでなく,食肉獣に追われる身となりました。
あるものは,地下にもぐって難を逃れモグラになり,最後に残された生態圏である樹上に逃れたのが霊長類です。樹上生活は危険もありましたが,遠くを見ることが視覚の発達をうながし,樹上ということが空間認識を発達させたなど,その影響は,はかり知れないものでした。
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