なし | 手記した皇太子のサインを二百万ドルで売ってくれという人が
《昭和三十八年E》 アムステルダムにおける風物では、置物になる風車の形などは特有のものだが、世界の人に愛重されるダイヤモンドの生産については特別興味を持つものである。 我等一行の見学プランの中には、このダイヤモンド工場のアッシャー、ガッサムの両工場を見ることが計画されていた。第二日目の日、先ずアッシャー・ダイヤモンド社の工場を訪問した。予め持参した本社のステートメントをアッシャー社の社長に渡して工場内の参観が許されたのである。アッシャー社では、社長のL,IaaAUER氏が直接応対してくれて詳しく説明してくれた。そして一同が記帳したあと、工場内を見学したのであるが、ダイヤモンドの加工工程を順次見て回っていく中に、特に注意深く感じたのは、女性も男性も共に年数の積んだ熟練工が職場に多く揃っていたということであった。 ここを訪問した世界の有名人が記帳した中に、日本の天皇が皇太子の当時、まだ現代の皇太子がダイヤモンドを目に近ずけてルーペでダイヤモンドを見ている光景が写真帳に綴られているのを見せられ、感嘆した。日本の天皇が、このアッシャー社のサイン帳に手記したそのサインだけを二百万ドルで売ってくれという人がありますよ、とアッシャーの社長さんは笑いながら説明してくれた。 次いでアムステルダムで第二のダイヤモンド工場だというカッサム会社を訪れた。社長のT,J.W.BARONVAM氏は、一行に親しくいろいろ説明してくれたあと、日本とダイヤモンドの取引について懇談したいとし、オリンピックの時に日本に行くからその時詳しい話をしたいと述べていた。ここの会社でべアー商会の上野専務がダイヤモンドを好んでいたので、私がダイヤモンドの品選びをして上げたのであるが、価格はそう高くはなかったが、そう安くもなかったような気がする。 私がルーペで見て選定した純白無キズ物正味五カラットのダイヤモンドは、邦貨換算で八百五十万円の値段を出していた。正に品質最高のものであったので欲しかったが、銭子の関係で断念せざるを得なかっだのは心残りに感じた。写真は日本の皇太子殿下が、且て訪欧した際に訪問した時のアッシャー社における見学中のスナップ。" |
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